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東京地方裁判所 昭和30年(タ)144号 判決 1955年10月14日

原告 ルシル・フランクリン・ミクラウズ

右代理人 マイクル・エー・ブラウン

被告 フエルデイナンド・ミクラウズ

右代理人 馬場東作

主文

原告と被告とを離婚する。

右両名間の長女バメラ、ピエローヌ・ミクラウズの監護者を原告と定める。

訴訟費用は被告の負担とする。

理由

作成の趣旨及び方式によりいずれもアメリカ合衆国公文書であると認められるから、真正に成立したものと認める。甲第一号証中旅券の記載、甲第二ないし第四号証によれば、原告主張の、原、被告の身分関係に関する事実、長女バメラ・ピエローヌ・ミクラウズの出生に関する事実はすべてその主張のとうりであることが認められる。

右旅券の記載、甲第一号証中、真正に成立したものと認める日本国上陸許可書に原告本人尋問の結果を総合すれば、被告は一九五二年(昭和二七年)三月商業を営む目的で日本に入国し、これに伴い同年一〇月原告も右長女とともに日本に入国して、肩書所住地に住所を定め、被告と同居して来たこと、被告は商用のためにたびたび日本国外に赴いたが、その間、韓国に行き、同国に滞在中は同国の婦人某と通じて同棲しており、その滞在中であつた一九五五年(昭和三〇年)初め頃原告にあて右の事実を明らかにしたうえ、今後原告との婚姻を継続して行く意思はない旨を述べた私信を寄こしたほどで、将来とも右韓国婦人との関係を続けて行くつもりであることが認められ、右認定に反する証拠はない。

法例第一六条によれば、離婚はその原因である事実の発生したときにおける夫の本国法によるべきものであるから、本件離婚は右認定事実の発生した当時における被告の本国法、すなわち、法例第二七条第三項に従いニユーヨーク州法によるべきものであるが、アメリカ合衆国国際私法は離婚につき当事者の住所地法によると定めるものであることは明らかであるので、法例第二九条により、結局当事者の住所地法である日本民法に準拠すべきものである。そうして、被告の右行為は同法第七七〇条第一項第一号にいう「不貞な行為」にあたるものであることは明白である。

つぎに、子の監護者の指定につき、考えるに、かような措置は法例第二〇条に則り現在の父の本国法に準拠すべきものと解するのが相当であり、従つて、前述のようにニユーヨーク州法によるべきものであるが、同州法によれば、なにびとを子の監護者と指定するかを裁判所の裁量に委ねていることは当裁判所に職務上顕著であるところで、原告本人尋問の結果によれば、原告は、現にその手もとで長女バメラ・ピエローム・ミウラウズを養育し、将来も同女の養育に専心したいと望んでおり、原、被告間で協議した結果も原告が同女を引取ることに協議もととのつたことが認められ、このようなことがらに本件離婚の原因に関する被告の前述のような行為をしんしやくすると、原告をして長女を監護養育せしめるのが同女の利益にかなうものと認定できるからその監護者は原告と定めるのが相当である。

そうすると、原告の本訴請求は、その理由があるからこれを認容すべきものとし、訴訟費用の負担につき民訴法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 加藤令造 裁判官 田中宗雄 間中彦次)

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